案件獲得 Studio制作は「納品」で終わらせない|AI時代に価値が上がる“定着支援”という考え方
この記事の要点
- AIによって「ノーコードでサイトを作ること」自体の価値は下がっていきます。一方で相対的に価値が上がるのが、納品後の「運用・定着フェーズ」です。
- マニュアルは、読まれても実行されないことが多いもの。新しいツールの定着には、渡すだけでなく「望む状態になるまで伴走する」支援が必要です。
- これからは「作ること」ではなく「やり切らせること」に対価をいただく——。この発想は、Palantirなどで知られるFDE(Forward Deployed Engineer)の考え方に通じます。
「サイトを納品し、Notionで作った操作マニュアルを共有する」。そして案件が無事に終わったとホッと一息つく——。Studio制作を仕事にしていると、多くの人が同じ経験をしているのではないでしょうか。
ただ、これからの時代を考えると、「納品完了」で終わらせるのは機会損失かもしれません。本記事では、Studio制作を仕事にしている方に向けて、「定着完了まで伴走する」という考え方を解説します。150名以上が参加するノーコードコミュニティ「ノーコードサロン」の制作現場で交わされている議論をもとに整理しました。納品の手順そのものはSTUDIOでサイト制作案件を納品する方法で解説しているので、あわせてご覧ください。
結論:ゴールは「納品」ではなく「定着」
結論から言うと、これからのStudio制作は、サイトを公開した時点をゴールにしないことが大切です。クライアントの組織にサイトが定着し、自分たちで運用できる状態になって、はじめて「完了」と考える。この視点の切り替えが、AI時代に選ばれ続けるための鍵になります。
その理由を、「AI時代に何が起きているか」という前提から順に見ていきます。
【前提】AI時代に「作る価値」は相対的に下がる
まずは前提の共有から。AIの登場によって、「ノーコードでサイトを作ること自体の価値は、今後下がっていく可能性が高い」と考えています。デザインもコードも文章も、AIによって一定水準のものが短時間で得られるようになってきました。その結果、「作れること」は以前ほど希少なスキルではなくなりつつあります。
しかし、価値が下がる領域があるということは、相対的に価値が上がる領域があるということでもあります。それが、納品後の運用フェーズです。
Studio制作者の多くは「作る」ことに時間とエネルギーを使い、「使われる」ことにはあまり手が回っていないのではないでしょうか。だからこそ、ここにはまだ取り組む余地が残っています。AIをどう味方につけるかはAI時代のStudio制作の視点も参考になります。
マニュアルは、読まれても実行されにくい
「Studioでサイトを制作して、納品時にマニュアルを渡す」。これは多くの人がやっています。特に丁寧な人は、Notionで操作手順をまとめたり、Zoomで簡単なレクチャーを行ったりもしています。
しかし、マニュアルはたとえ読まれても、実行されないことが多いというのが実感です。担当者は他の業務も抱えています。CMSを触った経験もないため、手順書を開いて少し読み、「難しそうだから、あとでやろう」と閉じてしまう。そのまま時間が経っていく——。想像できる光景ではないでしょうか。
これは相手の姿勢の問題ではありません。新しいツールの定着には、それだけの支援が必要だということだと思います。そこで本記事の提案は、納品後に「クライアントが望む状態になるまで伴走すること」です。
「望む状態」とは、たとえば次のようなイメージです。
- 自社スタッフがCMSを活用できるようになっている
- 制作者に連絡しなくても、定期的な更新が回っている
ここまで到達して、はじめて「定着完了」です。つまり、サイトを公開した時点がゴールではなく、クライアントの組織に定着した時点がゴールだと捉え直すわけです。
「やり切らせること」に対価をいただく
ここが本記事のメインです。対価の考え方を、次のように切り替えます。
- 従来:「作ること」に対して対価をいただく
- これから:「やり切らせること」に対して対価をいただく
「作ること」に価格をつける場合、AIを含めた価格競争の影響を受けやすくなります。一方で「やり切らせること」、つまりクライアントの組織が実際に運用できる状態まで持っていくこと。ここには、現時点でAIが代替しにくい仕事が多く含まれます。
たとえば、次のような仕事です。
- 担当者のリテラシーに合わせて、説明の仕方を変える
- ツール導入に慎重な人と対話する
- 社内の運用ルールを一緒に設計する
- つまずきやすい箇所を事前に把握し、先回りする
いずれも人の手による仕事であり、クライアントにとっての価値も小さくないはずです。そうであれば、ここに対価を設定することには十分な合理性があります。料金の考え方はStudio制作の料金・費用の決め方もあわせて検討してみてください。
FDEという考え方から学べること
この発想には、参考にしている概念があります。FDE(Forward Deployed Engineer)です。
Palantir(パランティア)などで知られる職種で、エンジニアが自社でプロダクトを開発して納品して終わり、という形をとりません。クライアントの現場に入り込み、実際に機能する状態まで作り込みます。背景にあるのは、優れたプロダクトであっても、現場で使われなければ価値が生まれないという考え方です。
これはStudioでの制作にも通じます。依頼を受けて作るだけでなく、作ったあとに定着させる。この発想は、AI時代のStudio制作者が向かう先を示してくれます。
※FDEの実際の役割や運用は企業によって幅があります。ここでは「現場に入り込み、定着まで見る」という発想の部分を参考にしています。
よくある質問(FAQ)
よくある質問1. 定着まで伴走すると、工数が増えて割に合わないのでは?
単発の制作費だけで考えると割に合わないこともあります。だからこそ「作ること」ではなく「やり切らせること」に価格を設定する発想が必要です。導入サポートや月額の運用支援として切り分けて見積もれば、増えた工数に見合った対価を受け取れます。価格の切り分け方は料金・費用の決め方を参考にしてください。
よくある質問2. すべての案件で定着支援まで提供すべきですか?
すべてで必須というわけではありません。クライアントが自分たちで運用したいのか、更新も任せたいのかは案件によって異なります。契約時に希望をヒアリングし、「作って渡すだけ」か「定着まで伴走する」かを合意しておくのが現実的です。渡し方の設計は納品する方法で解説しています。
よくある質問3. マニュアルはもう作らなくていいのですか?
マニュアルは引き続き有効です。ポイントは「渡して終わり」にしないこと。マニュアルを用意したうえで、実際に担当者が触れる場に伴走し、つまずきを一緒に解消していく。読み物としてのマニュアルと、伴走による定着支援はセットで機能します。
まとめ
AI時代、「作る」ことの価値は相対的に下がっていきます。だからこそ、目を向けるべきは納品後の運用フェーズです。要点を整理します。
- 「作る」ことの価値は相対的に下がる。運用・定着フェーズに目を向ける
- 品質には「クライアントが自分で回せる状態か」も含まれる
- 納品とマニュアルで終わらせず、望む状態まで伴走する
- 「やり切らせること」に対価をいただく
- ゴールは納品ではなく、定着(導入完了)
Studioでサイトを作れる人は、すでに多くいます。一方で、クライアントの組織に定着させるところまで担える人は、まだ多くありません。だからこそ、AI時代のStudio制作で取り組む価値のある領域だと考えています。
「作る」から「やり切らせる」へ。次の一歩を、一人で考えない。
ノーコードサロンでは、150名以上のメンバーがStudio制作や案件のノウハウを共有しています。定着支援の設計や料金の切り分け方も、実際に受注している仲間に相談しながら進められます。 まずは1ヶ月間参加してみる